ドリームの日記

社会の荒波に負けた。

作者不詳 ミステリ作家の読む本(上)を読んだ

三津田信三さんの「作者不詳 ミステリ作家の読む本」を読みました。

上下巻あるので、まずは上のお話から。

 

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忌館、作者不詳、百蛇堂(蛇棺葬も)は作家三部作と呼ばれていて、全部主人公が三津田信三さん。編集者であることとか、友人の名前とか同僚のこととか、ある程度は本当の話を混ぜてるんじゃないかなと思ってます。

調べてないから知らんけど!

 

で、作家三部作の二作目になるのがこの作者不詳です。

一作目の忌館で、怪しげな家に住んだばっかりにとんでもない目に合った三津田さん。性懲りもなく怪しい古本屋を見つけて嬉々として通います。

そこに、友人の飛鳥さんも通うように。飛鳥さんは古本屋の主人からこれまた怪しげな同人誌「迷宮草子」を紹介され、購入。

本当にお前らの好奇心少しくらい黙ってられないの?

 

忌館が三津田さんに起こる怪異と、三津田さんが書いた小説を交互に入れてきたように、作者不詳では飛鳥さんが手に入れた迷宮草子の内容(短編集なので1話ずつ)と三津田さん、飛鳥さんに起こる怪異が交互に書かれています。

 

2人にどんな怪異が起こるかというと、迷宮草子に書かれているのと関連するもの。迷宮草子は短編集で、そのどれもが少し謎を残す感じで終わっています。

2人は1作ずつ読むんだけど、1つ読むと怪異が起こる。てか普通に幽霊っぽいものに命を狙われだす。

例えば短編集一作目の「霧の館」を読んだら、他の人には見えていない霧が見えて、というか常に霧に包まれるようになって周りが見えなくなって危ないし(轢かれそうになったりする)あと化け物っぽいものが霧の奥から追ってくる。こわ~~~

 

それから逃れるには、迷宮草子の中では解決されていなかった「謎」を解かなきゃいけないということです。

 

「霧の館」では、沙霧と砂霧が出てきます。名前だけだけど東城雅哉さんも出てくる。ひゅう。

厭魅の如き憑くものとは関係ない感じだけど、それでも知ってる名前が出てくると嬉しいね。

主人公の男が山中で道に迷い、沙霧の住む館に泊めてもらったんだけど、沙霧が何者かに殺される。殺せるタイミングのあった人間なんていないのに! みたいな話です。

 

基本的に三津田さんはオロオロしてて、飛鳥さんが冷静に謎解きしてくれる感じ。ワトソン役は必ず必要よね。

そして飛鳥さんが霧の館の謎を解いて喜んだのも束の間、二話目の怪異に襲われます。

なぜなら飛鳥さんは霧の館を謎を解く前から二話目に進んでしまっていたから。頼むからクリアリングしてから進んでくれ。

 

ていうか、怪異にあいたくないなら読むのやめれば? となると思うのですが、どうやら「謎を解かないと消える」らしく、今までにこの迷宮草子に手を出して行方不明となってる人が何人もいることが判明。最後まで解ききるぞ! と決意するのでした。

殺されるとかじゃなくて、消えるってのが曖昧でまた怖いのよな。

 

そして二話目は「子喰鬼縁起」。タイトルからビビらせにきてんじゃん。

 主人公は、奥さんも息子も亡くしてしまった男。息子が事故で死んだのをきっかけに、昔奥さんと体験した“子ども”に纏わる恐ろしい体験を思い出して書き留めるという内容です。

その恐ろしい体験っていうのは、当時妊娠中の奥さんと地元の祭り行ったら赤ん坊を連れている夫婦と仲良くなり、なぜかそのメンバーで見世物小屋に入り(そんなところに妊婦が入るな)見世物小屋の中で夫婦の子どもが消えちゃったというもの。

いったい誰が子どもを連れ去ったのか? でも男は最後になんだか知っているふうな感じを醸し出しておわる・・・って感じです。

これはさ、たぶんわかるよ。誰がなんで犯人なのかはわかると思う! わたしはわかった! やったーーーーーー!!!!

 

子喰鬼縁起、タイトルのわりに怖くない内容だけど、これを読んだことによって巻き込まれる怪異はけっこう怖い。

ペタッペタッと赤ん坊がハイハイして近づいて来る音が聞こえたり、泣き声が聞こえたり。最終的に三津田さんはなぜか成長したっぽい赤ん坊に追いかけられる。成長すんな。

とりあえず思ったのは、真っ暗で普段から怖い雰囲気の倉庫に、怪異にあっている最中に1人で入るな。危機管理0かよ。

これも、飛鳥さんがいくつも仮説を考えながら真相に辿りつきます。そして消える赤ん坊の泣き声。よかったね。

 

三話目は「娯楽としての殺人」。これはけっこうおもしろい。

主人公はきったない下宿に住む女子大生。ごみ置き場で古本を漁っていたら(漁るな)「娯楽としての殺人」という原稿を発見する。内容は「親友を殺したいぽよ。むかつくところなんて一個もないけど、親友を殺したらどんな気持ちになるのか知りたいからおいら親友殺すぽよ!」というもの。

女子大生の住む下宿には、3人の小説マニアがいて、その中の誰が書いてもおかしくない内容だったから何も思わなかったものの、後日、下宿の中で唯一女子大生が懐いていた真戸崎さんという男性が殺される。毒で。

女子大生は、そこで「娯楽としての殺人」を本当にやったやつがいると確信し、3人の小説マニアたちにそれぞれ“尋問”を開始する・・・というおはなし。

 

この女子大生目線で話が進むんだけど、かなり脳内ハッピーな人間なのでテンポよく読めて楽しい。迷宮草子は怖いけど、迷宮草子に書かれている小説全てが怖いわけではないらしい。子喰鬼縁起も怖い話ではなかったしな。

そして、これもたぶんわかると思う。誰が「娯楽としての殺人」の作者なのか! わたしわかった! やったーーーーーーーーーーーーー!!!!

 

この話を読んで起こる怪異は「親友に殺される」というもの。今まで順調に謎を解いていた飛鳥さんが怪異の何かに操られ、三津田さんを殺そうとします。

それに気付いて飛鳥さんを縛り上げ、なんとか自力で謎を解こうとする三津田さん。操られている飛鳥さんは「お前なんかに謎が解けるかばーーーーか!」みたいにずっと馬鹿にしてくるので、わたしはなんだか切なくなった。

それでも何とか三津田さんが謎を解ききり、飛鳥さんも正気に戻ってめでたしめでたし。正気の飛鳥さんに「こんなんすぐわかる」みたいに言われてやるせない気持ちにはなるけどな・・・。

 

上巻最後の四話目は「陰画の中の毒殺者」。

主人公の男が大学生の頃に登山していて、山小屋で会った老人に聞いた話。回想の中で別人の回想が始まる。

老人が若い頃に遭遇した殺人事件の話。1人の女とその女が好きな4人の男でお茶しながら雑談してたら、唐突に笠木という男(一番脈ありだった)が苦しみだして死んだ。

笠木が口にしたのは、女が配ったワインと机の上に置いてあった砂糖だけ。いったい誰がいつの間に毒を入れたの~~~~~!? という話です。

ちなみに老人はその話を語った後、夜が明けたら消えていたということです。

 

迷宮草子の中では、個人的に一番魅力を感じなかった話。

誰が毒を入れたのか!? というのは王道っぽくて良かったけど、真相は「えっそれは反則のやつじゃん?」って感じだし。

 

この謎を解くときに飛鳥さんの妹の明日香ちゃん(妹の名前、あすかあすかなんだ・・・)に話を聞かれ、明日香ちゃんも推理に参加してきます。

明日香ちゃんにも怪異が起こるのでは!? と2人は焦りますが、迷宮草子を読んでおらず、2人の話を聞いただけというので何とか問題ない様子。

ただ、話聞いただけでそんな細かい描写までわかる??? 本当は読んだんじゃない???? と心配になる場面もある。たぶん読んだ。

明日香ちゃんが推理するところはけっこうおもしろいので、そこが陰画の中の毒殺者のパートで唯一好きなところです。

 

この話はみんなでいっぱいいろんな推理を出し合って、その中のどれかが当たっていたっぽい。わたしは明日香ちゃんのやつかなぁと思ったけど、やっぱし最後に出た説なんだろうね。反則やないかい!

あとなんかよくわかんないけど怪異現象も起きなかった。なぜ。毒とか出せや。

 

そんな感じで上巻は終わり。

迷宮草子の短編は全部で7作。全て読んだらどうなってしまうの~~~~!? って気持ちですぐに下巻を読んでしまうよ。やったね!